イベント報告

公開シンポジウム 3.11原発事故と国際学の未来

 

日時:2012年5月19日(土)13時00分〜16時00分  

場所:宇都宮大学教育学部D棟2101教室


<プログラム>
13:00 開会の挨拶  石田朋靖  企画・広報担当理事  
    主催者挨拶  内山雅生  国際学部長 
    講師紹介   清水奈名子 司会・国際学部准教授
13:15 講演@ 「フクシマと向き合うこと」 
      講師 小原一真氏(フォトジャーナリスト・国際学部卒業生)
    質疑応答

14:20−14:30   休憩(10分)

14:30 講演A 「福島で生きること」
      講師 二瓶由美子氏(桜の聖母短期大学 准教授)
15:10 コメント   田口卓臣  国際学部准教授
    ディスカッション・質疑応答 
    閉会の挨拶  高際澄雄  多文化公共圏センター長
16:00 プログラム終了


主催:宇都宮大学国際学部  
共催:国際学部附属多文化公共圏センター・生涯学習教育研究センター


⇒チラシ

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<講師・コメンテータ―の紹介> ◎小原 一真(おばら かずま)略歴   岩手県に生まれる。フォトエージェンシーKEYSTONE(スイス)所属。宇都宮大学国際学部にて社会学を専攻。   金融機関で働く傍ら、DAYS JAPANフォトジャーナリスト学校にて学ぶ。東日本大震災直後に会社を退職、3月   16日から現地での取材を開始。2011年8月に行った福島第一原発での取材はヨーロッパ各国の新聞、テレビに   掲載された。2012年3月10日、スイスのラースミュラーパブリッシャーズより、東日本大震災、福島第一原発   事故の取材をまとめた「Reset Beyond Fukushima?福島の彼方に」を出版。 ◎二瓶 由美子(にへい ゆみこ)略歴   東京都に生まれる。桜の聖母短期大学准教授。専業主婦11年を経て、女性の権利としての経済的自立、子ども   の権利としての頭髪の自由について研究するために福島大学大学院に入学し、その後短期大学教員として経済   的自立を果たす。生まれた場所で生涯を送りたいと望む学生たちとともに歩んできたが、東日本大震災による   福島第一原子力発電所事故は、そうした学生たちに動揺を与えた。そこで、チェルノブイリ調査団に加わり、   「福島で生きること」の意味とリスクについて問い続けている。 ◎田口 卓臣(たぐち たくみ)略歴   宇都宮大学国際学部准教授。専門は18世紀のフランス文学・思想研究。主著に『ディドロ 限界の思考−小説   に関する試論−』(風間書房、2009年)の他、阪本公美子・高橋若菜との共著論文「放射線の人体への影響に   関する先行研究に基づく福島原発事故への対応策の批判的検証−なぜ乳幼児・若年層・妊産婦に注目する必要   があるのか?−」(『宇都宮大学国際学部研究論集』第32号所収、2011年9月)等がある。



<シンポジウム報告>

   震災後1年が経過し、世論の関心やメディアの注目が震災や原発事故から離れつつあるなか、目を逸らしたくな るような困難な問題に敢えて目を向け、考え続けるという、学問の府である大学の社会的な役割を果すべく、今回 のシンポジウムが企画されました。会場には学内外から130名近くが集まり、講演内容に熱心に聴き入りました。 シンポジウム会場   前半は、国際学部の卒業生である小原一真講師より、2011年8月に撮影 してきた福島第一原子力発電所の現場報告と、原発で働く作業員約30人に 撮影、インタビューしてきた取材報告が行われました。作業現場の写真や インタビュー動画などを織り交ぜながら、通常のメディアではその姿がみ えてこない存在である福島第一原発収束現場で働く作業員たちの声と実態 に迫った経験が語られました。小原氏が取材した作業員の多くは、経済的 な理由だけでなく、地元である福島の窮状をどうにかしたいという使命感 から作業にあたっていること、またそれらの作業員が高い放射線量の中で の過酷な作業を強いられていること、収束作業が数十年かけて行われるこ とから今後作業員が不足する恐れがあることなどが報告されました。 「小原一馬写真展3.11」会場   会場には取材を受けた作業員2名も駆けつけ、作業員には原発の現 状についての情報が十分に与えられないまま作業が進められているこ となど、多くの問題が指摘されました。なお作業員のインタビューの 詳細は、小原講師が撮影した写真とともに、シンポジウムから1週間 の日程で同時開催された「小原一真写真展 3.11」(大学内UUプラザ 2階)の会場において紹介され、テレビ、新聞各社が取材に訪れました。        後半では、二瓶由美子講師より、放射能汚染が続くなか、福島に残って講師とコメンテーター  生活している人々はどのような状況に置かれており、原発事故に対してい かに対応しているのかについて報告が行われました。避難を余儀なくされ る世帯がある一方で、健康リスクと生活リスクの狭間で悩み、家族やコミ ュニティが分断されることで多くの問題が生じていることが紹介されまし た。また、今後必要な支援を考えるうえでは、被災者がどのような選択を しても安心して暮らせることが重要であり、当事者のなかでも多様な世帯 ごと、ジェンダーや社会的役割ごとにきめ細かな対応が求められているこ とが強調されました。 ディスカションでは、国際学部の田口卓臣教員から、人類が初めて経験 する今回の原発震災に関しては、いかなる者も権威として語る資格を持た ないこと、したがって何よりも被災当事者の声に耳を傾けるところから始 めなければならないこと、そのうえで栃木県を含めて福島以外の地域の者 たちも被曝し続けている現実を直視すべきこと等について、問題提起が行 われました。続く質疑応答では、原発事故後の対応を見る限り、はたして 日本において民主主義は機能しているのか、といった問題が聴衆から投げ かけられ、活発な議論が行われました。 なおシンポジウムの記録は、今年度末に刊行予定の『多文化公共圏センター年報』に掲載する予定です。最後に なりましたが、今回の企画にご協力いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。                                                         報告:清水奈名子(国際学部准教授)



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