イベント報告

   アンケート報告会・座談会報告書

 

 2012年12月16日(日)に、小さなお子様と避難してきている方を対象に、これまで実施してきたアンケートの
報告会及び、参加者の懇談会を宇都宮大学にて開催した。

【アンケート報告会】
 アンケートについては、とちぎ暮らし応援会によるアンケート、及び宇都宮大学国際学部附属多文化公共圏セ
ンター(CMPS)福島乳幼児妊産婦支援プロジェクト(FSP)によるアンケート結果の報告があった。
 とちぎ暮らし応援会の運営委員の君嶋福芳氏から、「栃木県内広域避難者アンケートにみる避難者ニーズ」と
してアンケートの分析結果に関する発表があった。主に、2011年11月(配布数757世帯、回収151件、回収率19.9%)
に行ったアンケートと2012年8月(配布数1,060世帯、回収247世帯、回収率23.3%)に行ったアンケートを比較し、
変化している状況と、全く変わっていない状況、双方が紹介された。例えば、世帯の家族構成は、一人世帯が増
加し(7%→18%)、就業状況が決まった世帯も若干増加し(23%→30%)、「栃木県内に定住したい」家族も増加
した(10%→19%)。他方、「これからの状況で決める」と考えている家族の比率も大多数ということも変わって
おらず(61%→58%)、コミュニティ(身近に相談できる人、知り合いがいるか)の存在が「いない」世帯も37%
でほぼ変化がない。避難者同士の交流会、たまり場が「ほしい」世帯は減少している一方で(64%→32%)、避難
元(市町村)ごとの交流会を必要としている世帯は59%にのぼる。また、情報については、「除染の状況」(87%)、
「地元自治体の状況」(69%)、「病院」(50%)などについて知りたい世帯が多かった。
(詳細資料については、別紙参照(予定))
 次に、FSPが実施した2つのアンケート結果が、宇都宮大学の阪本公美子より紹介があった。第一に、栃木県
内の全避難者を対象に行った「必要な支援についてのアンケート」(配布数1070世帯、回収225件、回収率21%)
については、同項目を含む群馬大学、茨城大学のアンケート結果と合わせて北関東の避難者の支援に関する希望
の分析結果を紹介した。もっとも必要性が高いと評価した避難者が多かった支援は、「高速道路の無料化など、
避難元と避難先を行き来するための交通費の助成」であり、北関東全3県(茨城・栃木・群馬)で9割前後の避難
者が評価していた。次に、「現在住んでいる仮設住宅(借上げ住宅)の長期・延長化」については、その質問を
聞いた栃木で85%、茨城で78%の避難者が重要な支援と評価していた。「福島市の除染も進んでおらず、帰れそう
にないのに借上げ住宅期間が終了してしまうのは、とても困ってしまいます。」という声の紹介には、参加者も
大きく頷いていた。
 未就学児世帯に焦点を当てると、内部被ばく検査や甲状腺検査など、放射線の健康影響に関する検査の実施、
健康相談の受付については、栃木では97%、茨城では89%、群馬でも85%と、切望する世帯がほとんどであった。
自主避難者に対する支援については、自主避難者は3県で2割程度にあるにもかかわらず、7割に上る回答者が重
要な支援と回答し、未就学児世帯を含む世帯においては、栃木・群馬では86%、茨城では83%にも上る世帯が重要
な支援と回答していた。このことは、しばしばいわゆる「自主避難者」と「強制避難者」の分断について語られ、
状況の違いはあるものの、立場が異なるなかでの避難者間の共感があることが示された。
 最後に、栃木県に避難し「子育てをしていらっしゃる方へのアンケート」(配布数1070世帯、回収数85件、回
収率7.9%)結果についても紹介があった。栃木県の子育て支援サービスについて、どのような支援サービスも使っ
たことがない回答者がもっとも多く、24世帯いた。交流会については、他の避難者と交流したい(23世帯)、生
活や子育ての情報を得たい(21世帯)、リフレッシュになる(15世帯)から交流会に参加したい世帯がいたが、
「特に問題を感じないから」(13世帯)、「自分の話をするのが嫌だから」(6世帯)、「外出がおっくうだから」
(6世帯)交流会に参加したくない世帯、「余裕がない」(17世帯)から交流会に参加できない世帯もいた。避難
先の子育てに望むこととしては、「子育に役立つ情報提供」(42世帯)、「栃木での生活に役立つ情報提供」
(41世帯)、「放射線から子どもを守るための情報提供」(31世帯)などが多数の回答者に望まれていた。本ア
ンケート記述では、福島の方、母子避難の方、ママ友などの交流が欲しいというニーズが語られていた。報告会
後の懇談会、午後のFnnnP Jrによるクリスマス会は、このような声に対応するために企画された。
(詳細については、当日プレゼンアンケート結果詳細参照)

【グループ懇談会】
 これらのアンケート結果も参照しながら、参加者が、他の参加者と話し合いたいテーマについて紙に記載して
もらい、3つのグループに分かれ話し合った。それぞれのグループには、FnnnP Jr.メンバーが学生ファシリテー
ターとして加わり、必要に応じて君嶋氏、FnnnPサポーター津田、阪本が各グループにて情報提供した。

・グループ1
 テーマ:
 ・借り上げ住宅の引っ越しについて
 ・保育園について
 ・子供を遊ばせる場所について
 参加者:母親3名(うち一人は栃木の方)
 ファシリテーター:阿部
  「民間借り上げ住宅の引っ越しについて」
 民間借り上げ住宅にすんでいる方の一人は、一年以上、下の階の住人とのトラブルが解決できていない。住宅
の構造として、上の階に2LDKの大きな部屋があるため、小さなお子さん3人と2階に居住しているが、引っ越し
をして来て一ヶ月が経った頃から足音が響くと苦情を言われ続けている。不動産会社も仲介に入り何度も話し合
いの場を持っているが、住民との関係は改善していない。引っ越しをしようにも、借り上げ住宅からの転居は認
められておらず、引っ越しするのであれば実費になってしまうため身動きが取れない状態で、床にマットを敷く
などの対策はしているが子供に静かに生活をしなさいというのも不可能で困っていた。
  「保育園について」
 4歳のお兄ちゃんと2歳の妹を一緒に保育園に入学させたいが、2歳児保育は需要が多く住民票を福島県に残し
ているために、地元の人優先に入園が決まると言われてしまった。保育所が決まらないと、働きに出られず、東
京電力からの損害賠償を受けられない地域からの避難なので生活が厳しくなってしまう。また、栃木県内でも市
町によって保育園の規定が違うため対応の差が激しい。一方で住民票を移してしまうと、福島県で放射能関連の
検査が受けられなくなってしまうだけでなく、民間借上げ制度も受けられなくなるため、手詰まり状況となって
いる。
  「子供を遊ばせる場所について」
 なかなか子供を遊ばせる場所をみつけられない、情報がないということだったので、FnnnP Jr.メンバーの学生
が作った宇都宮マップを、話し合いの後でプレゼントした。

・グループ2
 テーマ:お米と引っ越し
  参加者:母親3人
  ファシリテーター:ホセ、情報提供者:君嶋氏
 3人が紙に記載していたテーマは「お米」、「引っ越し」、「借り上げ」、「住民票」、「高校情報」など多岐
に亘っていたため少人数の話し合いということもあり、話しやすいと思われる「お米」から取り上げることにし
た。
  「お米」について
 現状では、未だにスーパーや生協などで米を買うことに抵抗がある方が複数いた。それは放射線量と無関係の
地域であってもそのように捉えている。震災以前は親戚や近所からお米を手に入れていたため、「誰がどのよう
にして栽培しているのか」ということを理解して、安心して購入することができていたためである。しかし、震
災後の放射線量問題に加え、誰が作っているかわからないお米を口にすることにも抵抗があるとのこと。放射線
量に問題がないと言われているお米であってもその検査方法(取り出して検査をしているか、全体で検査してい
かなど)が明らかでないために、不安の声が上がっていた。それを受けて、君嶋氏が、測定器を導入している栃
木県北の市町役場などに行けば無料で1キロ単位のお米や野菜などの放射線量を計ってくれることに関する情報提
供を行った。
  「民間借り上げ住宅の引っ越し」
 二つ目の引っ越しに関してだが、これは幼い子どもを持つ親の悩みであった。現在住んでいるアパート
は狭いということもあるが、子どもが騒ぐ際に近所に響き迷惑がられているため生活がしづらいとのことであっ
た。君嶋氏によると、現行の借り上げ制度では、栃木県内の引っ越しは困難で、栃木県から福島県への引っ越し
のみ可能となってしまうとのことであった。制度内では、近所づきあいに関しては参加者から「挨拶をする、さ
りげなく謝罪をする」などの円満にことが運ぶような提案があった。

・グループ3
  テーマ:「戻るタイミングが分からない」
 ・子どもを何度も転校させるのはかわいそう
 ・放射能に対する意見が家族で異なる
 ・借り上げ住宅の期間が終わったら戻る? 本当に大丈夫?
 参加者:母親3人(中通りから避難)
 ファシリテーター:加藤
  「戻るタイミングが分からない」
 本グループでは、いつ戻ればいいのか分らない、本当に戻っていいのかわからない、というような内容が話し
合われた。参加者さん自身やお子さんは、戻りたいという気持ちよりもこのまま栃木県にいたいという思いの方
が大きいようだった。しかし、ご家族は福島県で生活していることや、周りの家族はそこで普通に生活している
ことから、なんとなく雰囲気で戻ってきてほしいということを伝えられ、将来的には戻らなければという感じで
ある。また、戻ることになった場合、再び子どもを転校させなければならなくなる。ただでさせ、何度も転校さ
せて友達ができるまで時間がかかったのに、また転校させるとなるとかわいそうという話があった。そうであれ
ば、子どもの学校の区切りが良い時にさせたいとの思いがあるようだった。しかし、今住んでいる借り上げ住宅
の期間が終了したタイミングや、何らかの区切れで戻ったとしても、除染が進んでいるとも限らないため、本当
に大丈夫なのかも分からず不安な様子だった。
  その他出された意見一覧借り上げ住宅の期間が終わったらどうすればいいか分らない。
・期間が終わったからといって戻ったとしても、安全とは言い切れないし、除染がどの程度終わっている
のかわからないため不安である。
・参加者さんやお子さんは比較的このまま栃木県にいたいと思っている人が多く、今も福島県で暮らす夫
やその他のご家族は「大丈夫」だからという思いが強い。「戻ってきて」とはっきりは言われないが、やん
わりと言ってくる。しかし、聞き流すようにしている。
・夫も仕事を辞めて移住を決めた家族がうらやましい。
・父親と別に暮らし始めたころは何も言わなかったが、最近「さみしかった」と子どもに言われた。
・家族や友人などは福島にいるため、自分たちだけ「逃げる」という選択をした感覚が今もある。どうせなら
「出て行ってください」と言われた方が楽。
・「今どうしているのですか?」(避難状況)があいさつ代わりになっている。
・戻るのならば子どもたちを何度も転校させるのはかわいそうだから、できるだけ小学校・中学校・高校の区切
りがいいときに戻りたい
・夫が毎週末会いにきてくれるので、高速道路の無料化は続けてほしい。
・検査などもはじめは、福島県に戻らないとできないため帰って行ったが、その交通費も請求したい。
・「自主避難」ということで分けないでほしい。

・【全体懇談会】
 各グループが話し合った内容について、相互に発表し、栃木県内での生活における地元情報や苦労(なかな
か解決しないご近所さんとのトラブル)、などについて活発な意見交換があった。また、避難先である栃木県
の方々に、避難者家族の状況や苦労があまり理解されていないことについて共感があり、是非、栃木県内の地
元の方々に、避難者、母子避難者の状況の発信をしてほしいという強い要望があった。
 君嶋氏から、「放射能に対する意見が家族で異なる」ことについては、最近では、放射能問題で家族の仲が
壊れてきているケースもあり、夫婦間や家族間でよく話し合うべき重要な問題なので、とちぎ暮らし応援会で
も、専門家を招き、母子避難の家族が一緒に考えられる場を提供したい、という提案があった。
 阪本からは、大学に属するプロジェクトの責任として、小さなお子さんと避難していらっしゃる方の状況を、
これまでアンケート結果公表や報告会でも発表してきたが、これからも本懇談会の報告などを含めて、積極的
に発信していきたいことが述べられた。
 また避難者の大山氏からは、つながることによって共感し、問題解決ができることもあるので、これを機に、
つながりをつくっていくことが提案された。

・【学生ファシリテーター感想】
 ●今回改めて被災者の方の声を聞き、震災から時間が経つと共にニーズも、精神的なものからより現実的な
ものに変化してきているなと感じた。以前は、吐き出せないストレスや先行きの見えない不安に関する気持ち
を聞くことが多かったが、今回はこちらでの生活にある程度馴染んできた上で出る問題をたくさん聞いた。私
自身があまり具体的な知識を持っていなくて、話を聞くことしかできなかったのが少し悔しいと思った。(阿部)
 ●限られた時間の中で広範囲に及ぶテーマを取り上げ話し合うのは困難であると痛感しつつ君嶋さんに非常
に助けられたことに感謝。この分野において様々な知識をもっている君嶋さんをもっとこのような活動に参加
してもらえればと感じた。また、私のグループの参加者方は非常に話しやすかった(他のところもそうかな)
という点に於いてもファシリテーターをするにあたってし易かったのだと感じた。(ホセ)

・【主催・協力】
主催:宇都宮大学国際学部附属多文化公共圏センター福島乳幼児妊産婦支援プロジェクト(FSP)
協力:FnnnP Jr.(学生ボランティア団体)、とちぎ暮らし応援会、FnnnP栃木

⇒PDF版記録:アンケート報告・座談会




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